――シンジュク カブキ町(夜)
今日のチーム、あんまり強くなかったね〜!
飴村くん…… 敗者を貶めるようなことを言うものではありませんよ。
え〜! 事実なんだから仕方なくなくない?? ってことはボクに嘘をつけって言ってるの??
……そうは言っていません。言い方の問題です。
じゃあなんて言えばいいのさ〜!
そうですね。……健闘はしていましたが、 スキル不足が目立ち、努力を怠ったチームでしたね。
あはは……寂雷の言ってることのほうが 酷いと思うけどね〜。
事実を並べると、このような言い方が適切かと。
まっ! 要約すると雑魚ってことじゃん!
飴村くん……ですからそう言う言い方は……。
じゃっくらい♪ ボクお腹すいちゃった! なんか食べて帰ろうよ!
ええ、そうしましょうか。
っていうか寂雷?
どうしましたか?
お酒飲んじゃダメだからね!
ええ、そのつもりですが。
この間ホント酷かったんだから。
記憶がまったくないので謝罪することしか できません……。
まっ、飲まなければ全然いいけどね〜! さっ、早くどっかのお店に入ろ〜!
……。
ん?? どったの???
こんな時間なのに 明らかに未成年の子たちがあんなに……。
ホントだね〜。みんな楽しそうだし、 時間忘れちゃってるんじゃない??
……。
あ、ちょっと寂雷!
君たち、もう遅いから家に帰りなさい。
あんたには関係ないっしょ!
ほっといてよ!
親御さんたちが心配しますよ?
俺らの親が心配なんかするわけないっしょ!
帰ったほうが逆に危ないまであるし。
それは……。私でよければ相談に乗りますよ?
相談乗ってくれるなら、あんたがどうやったら ここから消え失せてくれるか 相談に乗ってくれよぉ!
ああ、ごめんね〜。このおじさん、 ボクが回収するから〜。さ、行くよ〜。
飴村くん! 彼らとまだ話が終わってません。
寂雷。ここに何人同じような子たちがいると思う? この全員の問題を解決なんてボクらにはできない。
仮に今目の前の彼らの問題を解決しても、 他の子達からしたら不公平になる。
しかし、だからといって見過ごすわけには……。
それにあんなに威嚇してる彼らがまともに話を してくれるとは思えない。だから今日は行こう……。
……わかりました。
ねぇ、君たち???
ンだよ?
色々あると思うけど、この街の夜は危険が一杯だよ。 本当の危険が迫った時、助けてくれる人はいない。 だからここから立ち去ったほうが身のためだよ。
ふん。偉そうに。 さっさとどっか行ってよ!
は〜い! それじゃ〜ね〜!
――翌日
――寂雷の家
ふぅ……。
(飴村くんの言う通り、全員を救うことはできない…… しかし何もしないというのは……。)
――着信音
――はい。
あ、じゃっくらい??
飴村くん。どうしましたか?
実はあれからカブキ町にたむろしてる子ども達について 色々調べたんだけどさ、イヤ~な情報をゲット しちゃったんだよね……。
嫌な情報……ですか?
うん……。あそこにいる子達の臓器を 狙っている奴らがいるとか……。
っ!?
金持ちたちは若くて健康な臓器に いくらでも詰むって話だよ……。
一体誰がそんなおぞましいことを……?
臓器ブローカーがいるらしいんだけど、 そいつの情報まではゲットできなかったんだ……。
見過ごすわけにはいきませんね……!
寂雷ならそういうと思った! ボクも最大限、力を貸すよ☆
飴村くん……ありがとうございます……!
――シンジュク カブキ町(夜)
昨日となんにも変わらないねー。
ええ……。それにしても飴村くんの得た情報が 本当ならなんとおぞましい……。
……情報をくれた奴らはいけすかないけど、 情報収集能力はこの国で一番だから 間違いないんじゃないかな。
凄い友人をお持ちなんですね。
あんな奴ら友達なんかじゃないよ。 そもそも解決できる力があるのに、なんにもしないし…… そんなことより、ここに来たはいいけどどうするの??
……彼らに直接話を聞く以外手立てはないでしょう。
昨日と同じ結果になるだけだと思うけどなー。
それでも何もしないよりはマシです。
少しよろしいですか?
……なんだよ?
君たちに聞きたいことが……。
最近、この辺で見かけなくなった子とかいたりする???
そんなの沢山いすぎて覚えてるわけないって。
どういう……ことですか?
どうもこうもないっての。 ここの入れ替わりなんて珍しくないし、今遊んでる奴らの 素性なんて知ってる奴、ほとんどいないんじゃね?
そーそー。いなくなったってことはなんかやらかしたか、 ここに飽きて姿を消しただけっしょ。
……みんな友達なのに寂しくないの?
ぎゃははは! なわけないっしょ! こいつらだって数日前に会ったばっかだし、 いなくなっても気にしねぇって。
……。
邪魔だから早くどっか行けよ!
寂雷、行こう。
ええ……。
……今の子達はここまで薄情なんですね。
う〜ん……ここの子達は特殊な事情があるだろうからね。
……なぁ?
君は昨日の……?
ボク達に何か用かな??
……相談に乗ってくれるって言ってたよな?
ええ、勿論です。
ささ! 遠慮なく話してよ☆
昨日一緒にいた奴らなんだけどよぉ……。 あいつらと連絡取れなくなっちまったんだ……。
君はちゃんと連絡先を交換しているんですね?
あいつらは育った養護施設から一緒だからな……。
……まだ1日でしょ? ……なんでそんなに心配するの?
俺らは小さい時から毎日一緒にいたんだ! それこそ1日も離れたことなんかない!
それは……心配ですね。
何か原因とか心当たりないの?
ここいら辺にいるガキをまとめてる大人達が よく違法な仕事を斡旋してくるんだ。
あいつらは俺とは別の仕事をあてがわれて…… そこから連絡取れなくなったんだ……。
……そいつらが真っ黒だね。
頼れる奴なんかいないし、 お前らに頼るしかないんだ……。 だから頼む! あいつらを探してくれ!
うん! 任せてよ! なんせボクと寂雷は ペアレントフレンドかつ、最強のコンビ なんだからさ! ね、寂雷??
そうですね。我々に任せてください。 必ずや彼らを見つけてみせます。
ありがとう……。
では早速聞き込みを始めましょうか。
うん!
――オフィス街
……。
……。
……つけられてるみたいだね。
……先ほどの広場からずっと我々を 睨んでいた彼らでしょう。
かくれんぼはやめて、出てきなよ☆
よぉ! 申し訳ねぇけど、テメェらは ここで始末させてもらうわ!
抵抗してもいいけどよぉ、苦痛が長引くだけだぜ!
じわじわ痛ぶりてぇから、じゃんじゃん抵抗してくれや!
あはは〜! ザコが使う定型文の見本市みたいだね〜! それにたった5人でボクらを どうにかしようなんて片腹大痛し!!
歓迎しますよ。 あなた達には聞きたいことがありますので。
テメェらマイクを出せ!
寂雷!
ええ!
――ふたりはマイクを起動する。
うわらばああああああああああああああああああああ!!
さてっと!
さて……あなた達の裏にいる人物を 吐いてもらいましょうか。
ううう……。だ、誰がウタうかよ……。
あはは〜。 喋らないのは裏にいる人への忠誠心じゃなくて、 そいつらが怖いからだよね?
……。
ボク達がそいつらより怖くないって思われてるのは 心外だな〜。もし舐めてるんならちょっと ホンキ出しちゃうよ?
飴村くん……。あまり手荒なことは……。
なぁに〜寂雷??
逃げられないように両足だけにしといてくださいね。
は〜い☆
ま、待て! 話す……! 話すからやめてくれ!
――……
素直に吐いてくれましたね。
だね〜! ってか寂雷、結構過激なこと言うんだね??
ふふ。冗談ですよ。 ああ言えば全て話してくれると思ったからです。
人は後からくる恐怖よりも 目の前の恐怖を回避したいと願いますからね。
寂雷こっわ〜い☆
さぁそんなことよりも 彼らが言っていた場所に向かいましょう。
うん!
――とある豪邸の前
ここが臓器ブローカーの家ですか……。
凄いお屋敷だね〜。
セキュリティーが万全のようですね……。 さてどうしましょうか……。
はいは〜い! ボクにナイスでグッドな あいでぃ〜あがあるよん!
寂雷! 早くこっちに来て隠れよ!
……?
――……
出てきた!!
出てきたって……あの柄の悪そうな人が どうしたんですか?
――走っていく乱数。
お覚悟!!!
なんだテメェは!?
――乱数はマイクを起動する。
ぎゃああああああ!!!
さ! 寂雷! これで今なら中に入れるよ☆
これがいいアイデアですか……。
悪人に人権なんてないんだよっ☆ さ、早く早く!
これも子ども達を救うためですね……。
――豪邸の中に入っていくふたり。
――書斎
ぐあああああああああ!!!
ふぅ……。かなりの人数がいますね。
まっ、ボクらふたりなら楽勝だけどね♪
……情報にあった地下室へ続く隠し扉はここですね。
――ボタンを押す乱数。
ポチッとな!
おお! 本棚の後ろに階段が!
さぁ行きましょう!
――地下室 牢屋
――子ども達が大勢閉じ込められている。
っ!?
こ、これは……!
た、助けて!/ここから出してくれ!/早く助けて!
待ってて! 今だしてあげるから!
鍵を探しましょう!
鍵はここだ。
へへへ。
っ!?
まさか正面からぶっ込んでくるなんざ、 ぶっ飛んでる野郎どもだな。
……貴方が彼らを?
そーだ。誰からも必要とされねぇ馬鹿なガキどもを どうしようと誰も悲しまねぇよ。
ゲス中のゴミ野郎だね。
まぁ俺も相当なゴミ野郎だが、こいつらの臓器を 買う金持ち達に比べたらまだ可愛い方だろうよ。
つーか、俺は誰からも必要とされねぇ ガキどもに価値をつけてやってんだ。 感謝してほしいくらいだぜ。
……彼らを返してもらいます!
返す? アホなこと言ってんじゃねぇ! アレは俺のもんだ!
話にならないよね……。 寂雷、早くマイクでやっつけちゃおう!
はっ、ヒプノシスマイクか……。おい!
はい。
――牢屋の鍵を開ける半グレF。
おら、大人しく出やがれ!
は、離して……!/や、やめろ!!
くっ! 子ども達を盾に……!
こいつら諸共やれんならやってみやがれ!
くっ……ど、どうする……寂雷?
……私に任せてください。
素手でどうするんだよ?
……外道には心置きなく私の技が使えます。
ははは! 技ってなんだよ!
……。
――寂雷の姿が消える。
なっ! 消え――
ふっ!
ぐえあ!
はっ!
あぎゃ!
――次々と半グレ達を倒していく。
なっ!
ぐぎゃ!
これで貴方の部下は全滅ですね。
な、なんなんだお前……。
あ〜あ。寂雷を怒らせるからこんなことに なっちゃうんだよ~!
ぼ、暴力に訴えるなんて今のご時世に反してるぞ! 正々堂々とマイクで勝負しやがれ!
あはは〜! お前が言うなって感じだけど、 寂雷! 勝負してあげようか!
ええ!
――マイクを起動する。
――……
あああああああああああああああああああああああ!!!
鍵ゲット! さっ、みんな出してあげる!
あ、ありがと……。/助かったよ……。
無事でよかったです。 ……貴方達の友人が心配しています。 すぐに連絡してあげてください。
うん……。
飴村くん、今回はありがとうございます。
気にしないでよ〜! これは人としてとーぜんのことだしさ〜!
けどさ〜。今回はボク達がなんとかできたけど、 世の中にはまだまだこんなことが溢れてるんじゃない? それを全部無くすって言うのは――
できないと言うことは簡単です。 だからこそ私はすべてを救えるように行動したいです。 それがたとえ傲慢だと言われても……。
それじゃボクも寂雷を手伝うよ! ひとりより、ふたりの方が 実現する可能性が高まるでしょ??
ありがとう……ございます、飴村くん。
いいっていいって! この後ご飯奢ってくれればさ〜!
好きなものを奢りますよ。