――イケブクロ 左馬刻の事務所
モニモニーン! ぬるさらがやって来たで〜。
――チッ。まぁ、しゃーねぇな……。 俺様が出張ってやんよ。
いや、左馬刻さんに出てもらうのは 申し訳ないっすよ……。
んなこと言ってられる状況じゃねーだろ。
モニモニーン! ぬるさらがやって来たで〜。
っせぇ! 聞こえてんだよ!
あ、そうなん?? 返事があらへんから聞こえてないんかと思ったわ〜。
んでんで?? んなこと言ってられる状況やないってどんな状況なん??
……バウンサーのシノギやってンだが、 昨日数人やられちまってよ。
あらら〜。そら難儀なハナシやなぁ……。
ンで、人が足りねぇから俺様が 出張ってやろうかと思ってな。
サマトキサマ、水臭いで〜! ここにとんでもなくスーパーハイパー頼りになる 相棒がおるやんけ!!
そんな野郎は見当たらねぇぞ……。
ドアホゥ! 目の前におるササラ・ヌルデ先生のことや!
お前がバウンサーを?
昨日のコント大会の借りもあるし、手伝うで!
荒事に向いてるとは思えねぇんだが?
向き不向きか言うたら、不向きかもな! せやけど不向きやからって なんもせぇへんのは相棒ちゃうやろ!
死ぬ気でやって「不向き」を「向き」にしたる! せやから任せときぃ!!
……まぁそこまで言ってくれるんなら、頼むわ。
おう、任されたで〜!! ほんで? どこにばうんさーしに行くんや??
まずは――
――イケブクロ キャバクラ
ほへ〜。キャバクラなんて初めてきたわ〜。 なんや想像通り下品な内装やな〜。
はっ、ちげぇねぇな。
んで? 俺らは何すればええんや??
とりあえず、揉め事が起きねぇ限りは バックヤードで待機だ。 行くぞ。
ただ待っとるんは退屈やし、 折角だからホールの仕事でも手伝おーか?
キャバのホールはただ酒だけ運んでりゃ いいってもんじゃねぇぞ。
なんでもええからやってみたいわ〜。 ここで働いた経験が今後何かの役に 立つかもしれへんし!
わーったよ。マネージャーにハナシ通してや――
っざけんじゃねぇ! ぶち殺されてぇのか!
なんやなんや!?
……早速出番ってワケか。 簓ぁ、まずはお前の腕を見せてもらうぜ。 頼んだぞ。
来たばっかしやのにもう出番かい……。 まっ、一丁このヌルサラがばしっと解決したるで!
テメェみたいな下っ端じゃハナシになんねぇ! 上を出せや!
やぁやぁやぁ!
ンだテメェは!?
見ての通りのオモロイ奴や!
あ? 舐めてんのか?
なはは〜! んなワケあらへんやろ。 それともべろべろ〜って舐めてほしいんかぁ??
あのバカ……。何煽ってやがんだ……。
テメェ! ぶっ殺す!!!
まぁまぁ、そんなカリカリしとんのはもったいないで! おにーさんはここに楽しみに来たんであって 怒りにきたワケやないやろ??
……まぁな。
ならなんでそんなドタマにきてるん?? よかったら俺に聞かせてくれへん??
なんでテメェなんかに……
話せば少しはイラつきも収まるからな! ささ! ちゃちゃっと話してみぃや! この簓サンは聞き上手なんやで?
チッ………… 俺がキープしてた高ぇボトルがねぇって言いやがんだ…… キレたくもなんだろ?
ほむほむ、なるほどなるほど。 確かにそりゃ頭にくんなぁ……!
せやけど、もしかしたら 前回全部飲み干してもうたっちゅー可能性はないんか??
ねぇよ! 帰る間際に新しく入れたボトルだ。 まだ一杯しか飲んじゃいねぇ!
ほぅほぅ。そら店の不手際やな! 怒るのも無理はないで!
だろ!?
全力でおにーさんを支持したる!
同調してんじゃねぇよ……。
せやけど……
――簓が輩に近づく。
な、何だよ……近ぇよ……
おにーさんは横にいるおねーちゃんを 口説きにきとるんやろ?
ああ……。
やったら、ボトルの1本くらい諦めて、 前よりも高いボトルを入れた方が 男を上げられるんちゃうか??
まぁ……確かに…… けど、もっと高いボトルかよ……。
ちまちま安いボトル入れとるより、高いモン入れたほうが おねーちゃんには刺さるおもうで〜。 やっぱり男は甲斐性があってナンボや!
た、確かに……!
はい! 決まりやね! お客さんにボトルのメニュー出したってや~!
――簓、左馬刻のところに戻ってくる。
まっ、ざっとこんなモンや! 簓さん、ばうんさーに向いとるやろ??
騒ぎを収められたからいいが……。 あれはバウンサーって感じの動きじゃねぇよ……。
暴れる前に収める! これこそが最強のばうんさーやろ!
まぁ確かに一理あるかもしんねーな……。
左馬刻も暴れるだけやのうて、 ベシャリでなんとかしてみぃ!
俺様の趣味じゃねぇよ……。
あれれ〜。 左馬刻サマともあろうお方が逃げるんか〜???
あぁ!? 俺様はどんなモンからも逃げたりはしねぇ!!
ほんならベシャリで解決して証明してもらおか!
っンだコラァ!!!
あ、丁度ええ! 揉め事みたいやから、なんとかしてみぃや!
やってやんよ!!
おい、そこの蛆虫野郎!
あぁ!? 誰が蛆虫だコラァ!!
テメェしかいねぇだろーが!
ぶっ殺すぞこの野郎!
あぁ!? 返り討ちにしてやんよ!
はいはいはい! ちょい待ちぃ!!!
簓ぁ! 邪魔すんじゃねぇ!
ベシャリでなんとかせなあかんやろ……。
チッ……。
何ごちゃごちゃやってやがんだ!
おい! 俺様がテメェのハナシ聞いてやっから ありがたく思えや!
あ? 何言ってんだ?
テメェの怒ってる理由を話してみろ。 そしたら俺様が見事に解決を――
っるせぇ! テメェみたいなドチンピラに 話す事なんざ何もねぇ! 失せやが――
――左馬刻、輩Bを殴り飛ばす。
誰がドチンピラだ! このドチンピラが!!!!
あぎゃらあああああああああ!
ふん。 俺様に喧嘩売るなんざ一兆年はえぇんだよ!
あ〜あ……やってもうた……。 いくらなんでも自制心がなさすぎるやろ……。
――まったく。 左馬刻、どんだけ短気やねん……。
っせぇなぁ……。 あのどさんぴん野郎がむかつくのがわりーだろ……。
人のせいにしたらあかんで……。
……ンなことより次はここだ。
クラブかぁ……。 ここも揉め事が多そうな場所やなぁ。
ああ。酔ったアホどもが乱痴気騒ぎすんだ。 必然揉め事も多くなる。
大船に乗りまくった感じで このササラ・ヌルデに任せとき!
……そう何度もうまくいくとは思えねぇけどなぁ?
あらら?? まさかサマトキサマともあろうお方が、 俺の功績に嫉妬しちゃったりなんか しちゃっとる感じなんか???
チッ……んなワケねーだろ。 調子に乗ってっと不測の事態に 対応できねぇんじゃねぇかって言ってんだ。
なんやえらい冷静な物言いやな。 すぐに手が出る短気な野獣なくせに〜。
誰が野獣だ!
――左馬刻、簓の頭を叩く。
あいたっ!
おら! 早く中に入るぞ!
ほら、すぐに手が出るやんか……。
――イケブクロ クラブ メインフロア
どっひゃあ! 想像以上にやかましい場所やなクラブっちゅートコは〜!
同感だな。 こんなウルセェ場所の何が楽しいのか まったくわかんねぇよ。
あ、タバコ切らしてもーたから、1本くれへん??
ほらよ。
おおきに〜!
テメェ! さっきから俺の足踏んでんだよ!
仕方ねぇだろ! この混雑なんだからよぉ!!
チッ……。 また早速揉め事かよ……。
とりあえずあの揉め事を収めてから一服しよか! 颯爽と解決してきたるで〜!
……大丈夫かよ?
よゆ〜よゆ〜! 今回も俺のベシャリでチャチャっと終わらせたる!
あ〜、ごほん! ちみたち、俺の話を聞くんや。
言い訳してんじゃねぇ!
あ? なんなんだテメェ?
……あ〜もしもし? 俺の話をやなぁ……
こいよオラァ!!
上等だぁ! やってやるよぉ!
あかん…… 周りがうるさすぎて俺の話が聞こえてへん……。
コラァ! このカマドウマ野郎ども! 周りの客の迷惑だ! 揉めてんじゃねぇ!!
ああ?? なんだこの野郎!
関係ねぇ奴は引っ込んでろ!!
あ? テメェ誰に上等こいてんだコラァ!!
さ、左馬刻…… ここでお前が暴れたらそれこそ周りの客の迷惑に……
ンなことわかってんだよ! 簓ぁ! マイク出しやがれ!
ヒプノシスマイクでぶちのめしても同じやんか……。
ぶちのめさねぇよ! ここはクラブだ……
ああ! なるほどなぁ!
こいつら全員ぶち上げりゃいいだけだ!
――……
直接、脳内にリリックをぶち込めるんだ! フロアを沸かせるなんざ簡単だろ!
せやなぁ! にしても便利なマイクやで……。
最高だったぜ!
もっとやってくれよ!!!
どないする左馬刻??
へっ! 暴れるよりビートに乗る方が 楽しいってわからせてやんよ! いくぞ簓!
お〜!!!! フロアをもっと沸かせたるで!!!!