――空厳寺
空却さん、 折り入ってお願いがあるっす!
おう、言ってみろ!
自分、改めて修行をつけてもらいたいっす! 実は……
そんじゃ、まずは滝行だ!
えぇっ!? あ、あのっ、 その前に相談もしたいっていうか……。
おい、クソ坊主見習い! まずは十四の話をちゃんと聞いてやれ。
お前も動揺してないでしっかり説明しろ。 このままじゃ滝にぶち込まれるぞ。
そ、そうだったっす……! 空却さん、まずは自分の話を聞いてほしいっす。
「坊主、事わけを聞くべからず」ってな! こまけぇことはいいんだよ! 修行がしたいなら、とっとと鍛えようぜ!
――空却、十四を見て、 何かやりたいことがあると察する。
別の修行をつけて欲しいってか? 仕方ねぇ。 聞いてやるよ。
実は先日、ライブをやったんっす。 自分なりに全力を尽くしたつもりなんですけど、 まだまだできることがあるんじゃないかと思ったっす。
曲を増やすにしてもパフォーマンスを足すにしても、 まずは体力が必要なんじゃないかって……。 それで、空却さんに修行をお願いできないかなと……。
ああ? 拙僧の修行は精神を鍛えるもんだ! 体力つけたけりゃ、その辺でも走ってろ!
そんな~!
ライブ自体は、客も盛り上がって成功したんだろ? そんなに気にすることもないんじゃねぇか?
まあ、努力しようっつー姿勢はいいことだが。
なるほどな、客は満足しても自分は満足できねぇってか。 こいつは、貪欲を断ち己を鍛えるいい機会だ! 拙僧が特別メニューを考えてやるぜ!
は、はいっす!
ほどほどにしとけよ、十四。 ファンイベント前に力尽きたら意味ねぇぞ。
えっ? なんの話っすか?
ん? SNSでも話題になってたろ。 お前のファンイベントのことだ。
そんな予定……ないっすけど……。
どういうことだ……? デマだとしても、誰が……?
ははーん、 いるじゃねぇか。 そーゆーことをする亡霊野郎が。
そうか、【ゴースト】どもか……!
――スマホを見る十四。
ファンイベントの告知動画を見つけたっす! こんなの、自分は撮った覚えがないのに……。
面白れぇ。 見てやろうじゃねーか。
そうだな。 確かめる必要がありそうだ。
――動画を再生する。
我が眷属に告ぐ! 仮初の世界にして、未来のまことなる世界にて、 同胞が集う会を執り行う!
我らの第二の郷里に集え! そして、来たるべき日に備えよ! そなたらこそ、強き者となる資格がある!
――動画が終了する。
なにを言ってんのか、さっぱりわからねぇ……。
これはファンの皆さんに向けたメッセージっす。 【MIRA】のVRナゴヤに集まれってことっすね。 日時は……今夜!?
かなり急だな。 こりゃあ、すでに何人か入ってんじゃねぇか?
一刻を争う事態じゃねーか。 どーすんだ、十四。
【ゴースト】を阻止して、ファンの皆さんを守るっす! そのために、実習生さんに連絡するっす!
――実習生の部屋
【MIRA】の真相になかなか近づけなくて歯がゆい。 「あの人」なら、こんな時どうするんだろう……。
――着信音
獄さんからだ……!
――通話
おお、 悠久の時を経て再び相見えようとは! (訳 ご無沙汰しているっす!)
仮初の世界にて、 亡霊が我が眷属を蹂躙せんと動いている! 汝の力が必よ……
――空却、十四をひっぱたく仕草。
だー! テメェは普通に喋れねぇのか!
痛いっすよ~!
やれやれ。 もっと静かに通話できねぇのか……。
【MIRA】で【ゴースト】が 動き出したんですね?
こいつ、十四が言ってること理解できんのか……! なかなかやるじゃねーか。
実習生さんの言う通りっす! ちゃんとわかってくれて嬉しいっす!
十四さんたちから状況を聞いた。 どうやら、十四さんの【ゴースト】が本人を装い、 ファンの人たちを【MIRA】に招いているらしい。
動画が投稿されてから時間も経ってるし、 ファンイベントの開催日は今日になってるっす。
既にログインした人がいるかもしれないから 実習生さんに調べてほしくって……。
この短時間でVRナゴヤにログインが集中している。 十四さんたちの予想通りだろう。
これ以上ログインさせないように した方がいいかも
そうっすね。 ファンの皆さんに、ネットで呼びかけをしてみるっす!
AIを使ったディープフェイク動画とでも言っとけ。 なりすましの類だと思わせろ。 半分は間違ってねぇけどな。
んで、そのあと【MIRA】に突入して 偽物野郎をぶっ飛ばせばいいんだな!
ああ。 だが、全部ぶっ飛ばすのは ログインした連中を助けたあとだ。
やっぱり、自分のゴーストは 皆さんを【MIRA】に引き込んで 精神エネルギーを得ようとしているんっすかね……。
だろうな。 それを阻止するためにノコノコと現れたお前を 乗っ取ることまで考えてるかもしれねぇ。
ログインするってことは、 自分から罠にかかりに行くようなもの……。 でも……っ!
もしもファンの皆さんを傷つけようとしてるなら、 自分が立ち向かうっす!
いいぜ? ただし、モタモタしてたら拙僧が亡霊野郎を倒す。 気合い入れていけよ!
はいっす!
十四さんは急いでファンに呼びかけを行った。 既にログインしてしまった人たちを救うべく、 自分たちは【MIRA】へとログインした。
――VRナゴヤ ライブハウス
ライブハウスぽいっすね……。 ここでファンイベントが……?
へぇ、ずいぶんと人が集まってるじゃねーか。 こりゃあ、説法のし甲斐がありそうだぜ!
こいつら、政府の注意喚起を聞きやしねぇな……。 説教してやりてぇぜ。
VRナゴヤで人が集まっている地点にログインした。 急速に人口密度が増加していたので、 ここで間違いないはずだが……。
――ステージ上には十四の【ゴースト】が。
我が眷属よ! よくぞ集まってくれた! さあ、第二幕も盛り上がろうぞ!
自分の【ゴースト】っす……! カッコよく決まってる……やるっすね。
そうか? いつものテメェと あんま変わんねーだろ。
第二幕ってことは、既に第一幕が終わったってことか。 なにをやっていたか気になるところだが……。
なにをやってよーが関係ねぇ! このイベントをぶっ潰せばいいだけだ! 行くぜ、てめーら!
待て! いきなり突っ込むな!
ああ?
俺には我慢ならないモンがふたつある。 ひとつ、「ピザの上に乗っているパイナップル」。 ふたつ、「後先考えずに突っ込むガキ」だ。
獄さんの言う通りっすよ。 まずは様子を見た方がいいっす。 下手に動いたら、お客さんが危ないかも……。
どうせ、あの手この手で 観客を【MIRA】に引き留めようってんだろ? 早めにぶっ潰した方がいいじゃねーか。
物事には順序があるので……
せめて、第一幕でなにをやっていたか知りたいっす。 お客さんが全員無事なのか気になるし……。
そうだな。 慎重に動いた方がいい。
まあ、そういうことなら仕方ねぇか……。 しばらくの間、 亡霊野郎の出方を見てやるぜ。
新たに集まった我が眷属たちよ! 我が声を聞くがいい!
ほら、やってるぞ。 【ゴースト】や周りの連中の挙動をよく見とけ。
ステージの周りを電脳ラッパーが囲んでるっす……!
チッ。観客は亡霊野郎に釘付けで 違和感に気づいてねぇってか。
現実世界は、時として汝らを虐げる者も現れるだろう。 我は眷属が傷つき、迫害されることに心を痛めている。
……っ!
汝らは我が眷属、 弱肉強食の犠牲となるべきではない。
弱者であるから虐げられるのだ。 強者となれば虐げられることはない! 今宵は我がそなたらに力を与えよう!
えっ? 強くなるための、力を与える……? どういうこと……っすか?
雲行きが怪しくなってきたな……。
なかなか骨のあることを言うじゃねーか。 だが――
眷属たちよ! いまこそ立ち上がり、我らを苦しめる悪魔を 浄化の炎で焼き尽くしてやろうぞ!
悪魔に浄化の炎を!
裁きの鉄槌を!
報復を扇動しているみたい……?
そうかもしれねぇな、 こいつは穏やかじゃねーぞ。
気合いが入ってんのは悪くねーが、 魂には響かねぇ。 あそこを見てみろ。
観客が立ち上がって盛り上がる中、 こっそり逃げようとしている人がいる。 動揺して怯えているようだ……。
どうやら、力を拒む者がいるようだな。 致し方あるまい。 「新生の間」に連れて行け!
十四さんの【ゴースト】が命じた瞬間、 待機していた電脳ラッパーが 逃げようとしていた人を捕えた……!
ひっ、離して! 会社で理不尽な目に遭ってるけど、 仕返しなんて……!
案ずることはない。 強き光に怯えるものがいることは知っている。 そなたは「新生の間」で生まれ変わるのだ!
まさか、同意しない奴は連れ去られるのか? 第一幕とやらでも同様の措置をとっていたとすると…… マズいな。
そんな! 早く助けに行かないと……! でも……
行ってこい。 亡霊野郎は拙僧たちが見張っててやる。
空却さん、獄さん……!
お前たちも気をつけろよ。
はいっす! それじゃあ実習生さん、 行くっすよ!
はい!
――VRナゴヤ 路地裏
十四さんとともに電脳ラッパーを追うことにした。 他の観客も連れ去られているかもしれない。 その場所を見つけなくては……
ひとりで戦うことになるかもしれない……。 でも、お客さんを助けるためっす……!
十四さんは強いですね
そ、そんなことないっす。 自分は弱かったけど、獄さんが助けてくれて、 空却さんが修行をつけてくれたから……。
ふたりがいたから、弱い自分と向き合えたんっす。 もし、自分が強く見えるのなら、 それはおふたりのお陰っす!
わかる気がします……
実習生さんもっすか? もしかして、自分と似たような過去が……。
昔、自分が対人関係のトラブルで学校に通えなくなり、 家に引きこもっていたことを明かした。
そんな事情があったんすか……。 今はお元気そうっすけど……。
メタバースの高校に通い、人と関わることに慣れて 恐怖心が薄れたお陰だ。ある人に才能を 見出されて自信がついたことも一因だろう。
それで、立派に社会復帰できたんっすか! いい出会いがあったんっすね。
はい! その人は神来社(からいと)識(しき)さん、 【MIRA】を生み出した人です
からいと……しきさん……。 素敵な人だったんっすね……!
それじゃあひょっとして、 実習生さんが今のお仕事をしているのは その人への恩返しも兼ねてるってことっすか?
【MIRA】を元通りにすることが 恩返しだと思って
それもあって、 危険を顧みずにログインをし続けているんすね。 自分も同じ立場だったら……きっとそうするっす。
神来社さんは病でこの世を去ってしまった。 だから、少しでも彼の遺志を引き継ぎたい。 そんな決意を十四さんに伝えた。
その気持ち、自分も応援したいっす。 一緒に頑張るっすよ!
はい!
さてと……。 電脳ラッパーたちの行き先はあそこっすかね……。
電脳ラッパーの足取りを追っていくうちに、 物々しい建物の前に辿り着いた。 観客はここに連れ込まれているようだ。
――VR新生の間
なんすか、ここ……。 まるで監獄みたいっす……。
さっきの観客以外にも人がいる。 自分たちが到着する前に連れ込まれたのだろう。
(我が眷属たちよ! 悪魔に報復して強さを見せつけよ! それこそ苦しみからの解放である!)
【ゴースト】の声……!?
スピーカーの音声です!
(さあ、今こそ新しく生まれ変わるのだ! 強き姿こそ、我が眷属に相応しい!)
十四さんの【ゴースト】の声が「新生の間」に響き渡る。 連れ込まれた人たちの様子がおかしい。 ダミー人形を殴ったり、蹴ったりしている……。
うう……、 強くならなきゃ……。 相手よりも強くなって、思い知らせてやる……。
様子がおかしいっす……。 いったい、どうしたんすか?
もしかしたら、連れ込まれた人たちは 【ゴースト】の言葉に 洗脳されかけているのかもしれない。
その考えを十四さんに伝えた。 おそらく間違っていないだろう……。
みんな、報復のために強くなろうとしてるっすか……。 こんな風に考え方を強要されるなんて、おかしいっす。
それに、こんなことで身につけた強さは、 本当の強さじゃない気がするっす。 とにかく、みんなを助けないと……!
―― 十四、連れ込まれた人々を助けようと飛び出す。
なんだぁ? まさか、オリジナルか! ついてきやがったのかYO!
―― 十四、マイクを構える。
実習生さん、 みんなを助けるために、力を貸してほしいっす!
もちろんです!
――マイクの封印を解除する。
行くっすよ!
――……
ぬわーーーっ!
はぁ……はぁ……。 なんとか倒せた……。 早く、みんなをここから避難させるっす!
――VRナゴヤ 路地裏
だ、大丈夫っすか? 気分が優れないとかないっすか……?
うう……、 会社の上司に一発かまさないと……。 ううん、なに考えてたんだろう、私……。
よかった、洗脳は解けたっすね……!
洗脳……? あれ、じゅうし? どうしてここに!?
本物の十四さんが助けに来たんです!
左様! 汝、偽りの我に導かれし時、 純然たる我が虚偽の檻を打ち砕いたのだ!
現世は苦難多き場所。 しかし、我の心と歌は汝とともにある……。
うん……。 現実は大変なことが多いけど、 十四のライブのお陰で頑張れるから……!
我もまた、眷属たる汝らの存在あってこそ。 ともに輝き、現世の闇を照らそうぞ!
そうだね……! その輝きを胸に、私も強く生きる!
十四さんのファンは、目に強い輝きを宿していた。 現実世界では大変そうだけど、 きっと上手くやっていけるだろう。
――観客Cをログアウトさせる。
自分が心の支えになれてるなら、 こんなに嬉しいことはないっす……。
連れ込まれていた人たちは、 外に避難させると次第に正気を取り戻していった。 全員をログアウトさせて、無事に救助を終えた。
みんなを助けられてよかったっす。 あとは、【ゴースト】の方っすね。 戻るっすよ。
はい、行きましょう
――獄が走ってくる。
ここにいたか……! ふたりとも、大変だ!
獄さん! どうしたんっすか? まさか、自分の【ゴースト】がなにか……。
違ぇ! 空却が【ゴースト】の演説に我慢できなくなって、 ステージに乱入しやがった!
ひえぇぇ、大変っすー!!
マイクが使えないから急がなければ! おふたりとともに走って会場へと向かった。
――VRナゴヤ ライブハウス
ステージの上に空却さんがいる……! 十四さんの【ゴースト】と電脳ラッパーに囲まれて 一触即発の空気になっていた!
空却さん! 大丈夫っすか!?
遅かったじゃねーか。 拙僧だけでこいつらを説き伏せようと 思ってたところだぜ!
大人しく説き伏せられるような相手じゃねぇだろ! 実習生がいないのに 先走りやがって……。
で、ファンは助けられたのかよ?
もちろんっす! 実習生さんが 全員ログアウトさせてくれたっす!
十四さんがひとりで敵を倒しました!
あ、あれは……! 皆さんを助けなきゃと思って、夢中で……。
―― 十四、ゴーストを見やる。
空却さん……。 相手は自分の【ゴースト】……。 ここは、自分に任せてほしいっす……!
テメェ自身と戦おうってか。 そんじゃあ、亡霊野郎はテメェに譲ってやるぜ。
十四、周りの雑魚は俺たちに任せとけ。
はいっす……!
貴様は我の原型ではないか。 「新生の間」に導いた眷属の気配が消えたのは、 貴様たちの仕業か!
じゅうしが、ふたり……? どっちが本物なの?
フン、原型が本物とは限らない。 どちらが本物に相応しいか、ここで決着をつけようぞ!
我は、弱き者を強くして至福を与えんとしている! 貴様は、弱き者が虐げられたままで良いというのか! 虐げる者より強くなるべきだとは思わぬのか!
うう……!
誠に残念なことだが、 我が眷属には強くなろうと思わない者もいる。 弱き者は滅びゆく運命であろう。
たしかに、虐げられるのはよくないっす……。 辛い気持ちは、よくわかる……。
でも、他人の考え方を無理やり変えるのは もっとよくないと思うっす。 自分から思うことこそ、本当の強さに繋がるっす。
己自身が決心するまで待つなど、言語道断! 強さを与えることこそが、 我ら選ばれし者の使命ではないのか!?
貴様は自らの役目を放棄しているのだぞ!
人によって弱いところも、強くなる方法も違う。 それに、強くなろうと思うきっかけは報復だけじゃない。 自分は、傷つけ合うことがいいとは思わないっす。
獄さんと出会って、空却さんに修行をつけてもらって…… 自分と向き合った結果、今の自分があるっす。
そう、こんな自分だって強くなれた……。 だから、今は弱くてもいい。
本人が変わりたいと願えば、 人は……自分の力で強くなれるっす!
――空却、観客を見渡す。
おお! 十四の言葉が観客の魂にぶっ刺さってんじゃねーか!
どっちに軍配が上がったかは、一目瞭然だな。
ええい! まだだ! 決着はこれでつけるぞ! 警備の者よ、マイクを構えよ!
へへ、ラップバトルなら容赦はしねぇ! 雑魚もろとも蹴散らしてやるぜ!
やるしかねぇようだな。 十四、こっからは俺たちも参戦させてもらうぜ。
おふたりとも、ありがとうございます……! 実習生さん、お願いするっす!
ともにシンフォニーを奏でましょう!
――マイクの封印を解除する。
その身に受けよ! これが我が友とのシンフォニーよ!
――……
バカな……!
我の方が弱い……だと……? 消えるべきは我だというのか……。 こんな形で終わるとは……。
終わりじゃないっす。
なに……?
自分の弱さから目をそらさずに向き合えれば、 強くなる方法も見えてくるはず。 そこが始まりっすよ。
弱いからといって否定する必要はない……。 報復だけが強さの証明ではない……。 弱さを自覚し、強くなろうと思うことが始まりか……。
十四さんが手を差し伸べ、【ゴースト】がその手を取る。 【ゴースト】は納得したように頷き、 消えていった……。
そう。 その先に、その人ならではの強さが 待っているはずっす……。
お前の話、なかなか良かったぜ!
自分らしいやり方で向き合えたんじゃないか?
えへへ……そう言ってもらえて嬉しいっす!
観客も十四さんの言葉に胸を打たれたようだ。 自分も自身を重ねて、励まされたような気がした……。
――空厳寺
ログアウトしたあと、 【Bad Ass Temple】のみなさんが無事か 確認するため、ナゴヤへと赴いた。
実習生さん、来てくれたんっすね! お疲れさまっす! お陰で、ファンの皆さんを助け出せたっす!
ファンイベントをやるっていう誤報も 結果的には嘘じゃなくなったし、なによりだったな。
それにしても、マイクの封印を2回も解除したにしては 平然とした面をしてるじゃねーか。
そういえばそうっすね。 以前は1回でも物凄く疲れてたのに……。
だいぶ慣れましたから!
何回もやってコツを掴んだってことか? さすが、要領がいいな。
頭がいい人ってすごいっすね。 自分も負けてられないっす!
そうやって前に進もうとしているのも、 やっぱり、神来社さんの影響っすかね。
からいと? 誰だ、そいつ。
空却さんと獄さんにも、神来社さんは自分の恩人で、 【MIRA】を創った人なのだということを伝えた。
そんな事情があったのか……。
神来社さんは、人と接することを怖がっている自分にも 平等に、そして丁寧に接してくれた。 彼の優しさがなかったら、自分は今ここにいないだろう。
でも今、実習生さんが こうしていられるのは、差し伸べられた手を取る 勇気を振り絞ったからだと思うっす。
手を取る……勇気……
そーだな。 立ち上がろうとしたのはテメェ自身の選択だ。 今だって自分で戦う道を選んでるし、たいしたもんだぜ。
一緒に頑張るっすよ、実習生さん! 神来社さんが創った世界と、 取り残された皆さんを救うために!
はい!
自分にも強さがあると教えてもらった。 この自信を胸に、前へと進み続けようと強く思った。