ヒプノシスマイク-Dream Rap Battle-

Chapter 18 本物の信念を貫く刻

TRACK 1 無差別強制ログイン

――ヨコハマ 山下公園

――遠くでパトカーのサイレンが鳴り響いている。

碧棺左馬刻

……チッ。 落ち着かねぇな……。

毒島メイソン理鶯

どうした、左馬刻。 小官をこんなところに呼び出して。

碧棺左馬刻

……ウサ公が来たら話す。

毒島メイソン理鶯

了解した。 しかし、銃兎が遅れるとは珍しいな。 それに今日はやけに街が騒がしいようだ。

入間銃兎

すまない……! 遅くなった……!

碧棺左馬刻

随分待たせてくれるじゃねーか。 どっかのクソ野郎が暴れてたのか?

入間銃兎

いや、それよりも厄介な事態だ。 インストールしていないはずの人間のスマホに、 【MIRA】が勝手にインストールされている。

入間銃兎

ヨコハマ中で同様の事案が発生している。 このままでは、他のディビジョンも……。

碧棺左馬刻

チッ……! 派手にやってくれるじゃねぇか……。

毒島メイソン理鶯

他人のスマートフォンに勝手に干渉するとは……。 だが、ログインしなければ問題ないはずだ。

入間銃兎

インストールだけで終わればいいんだが……。 ひとまず、今から防衛無線で ヨコハマ全体に注意喚起をする予定だ。

碧棺左馬刻

その勝手に入り込んだっつーアプリ、 消せねぇのかよ?

入間銃兎

被害に遭った人のスマホを借りて試してみたが、 どうやってもアンインストールできなかった。

毒島メイソン理鶯

いっそのこと、 スマートフォン自体を処分するのはどうだ。

入間銃兎

……いや、スマートフォンなしで生活するのは 現実的ではありません。仮に新しいものを買ったとしても 同じことが起こる可能性もある……。

碧棺左馬刻

だったら、別の手を試すしかねぇ。 そのためにテメェらを集めたんだからな。

入間銃兎

別の手? どういうことだ?

毒島メイソン理鶯

そういえば左馬刻、 小官らを集めた理由をまだ聞いていなかったな。

碧棺左馬刻

組の連中のスマホにも、 【MIRA】が勝手にインストールされた。 そいつの対応でシノギどころじゃねぇんだよ。

碧棺左馬刻

クソアプリに俺様のシマを荒らされるのは 我慢ならねぇ。 だから、乗り込んでぶっ潰す!

毒島メイソン理鶯

敵陣へ乗り込んで落とし前をつける――、 左馬刻らしい判断だ。

碧棺左馬刻

文句はねぇよな?

入間銃兎

単純かつ衝動的とも言えるが……、 現状、他に選択肢もないか。

毒島メイソン理鶯

小官も異論はない。 【MIRA】を止めたいという気持ちは同じだ。

入間銃兎

それならまず、実習生に連絡を――ん……?

碧棺左馬刻

どうした?

入間銃兎

署からの着信だ。 このタイミングだと嫌な予感がするな……。

――銃兎、通話に出る。

入間銃兎

なんだと……!? 使用者が操作していないのに、 次々と強制ログインさせられている!?

毒島メイソン理鶯

ついに、アプリが勝手に起動し、 ログイン処理を行うまでになったか……。

碧棺左馬刻

クソが……! 次から次へとやりたい放題しやがって……!

毒島メイソン理鶯

強制インストールされた組の者の安否も気になるな。 それに、小官らも【MIRA】を インストールしている身だ。

碧棺左馬刻

俺様たちも無理やり引きずり込むってか? 気に食わねぇ。 だったら、先にこっちから乗り込んでやんよ……!

TRACK 2 混乱の先で待つ者

――実習生の部屋

――着信音

実習生

【MIRA】内部をモニタリングしていたチームからだ。 何か新しい情報が得られたのだろうか。

開発者

実習生、聞こえるか! 緊急事態だ!

開発者

チームのひとりが「暴力的なリリックが聞こえた」 と言い残して意識不明に……! 内部から精神攻撃を受けた可能性がある……。

実習生

愕然としながら返答し、通話を終える。 ログインしていないのに攻撃を受けるなんて……! 「暴力的なリリック」とはいったい……。

――着信音

実習生

銃兎さんからだ……!

――通話

入間銃兎

よかった、無事ですね。

実習生

銃兎さん……!

入間銃兎

ご存知かもしれませんが、 ヨコハマ中で強制的にログインをさせられる人が 続出しています。

実習生

調べてみたところ、 他の地域でも同じような現象が発生しているようだ。 開発会社にも次々と報告が上がっている。

入間銃兎

それとは別に、問題があります……。

碧棺左馬刻

クソが! 俺様のシマで舐めたマネしやがって!

毒島メイソン理鶯

落ち着け、左馬刻。

碧棺左馬刻

テメーは好き放題されっぱなしでいいのか? 俺様は我慢ならねぇ。 先に行くぞ!

入間銃兎

このように、 今すぐ行くと言って聞かない奴がいて……。

入間銃兎

元々、我々は【MIRA】に行くつもりで あなたに連絡を取ろうとしていたのですがね。 その間に状況が進んでしまったというわけです。

実習生

そうだったんですね……

入間銃兎

強制ログインについて、 何か知っていることはありませんか?

実習生

左馬刻さんの【ゴースト】が 関与しているかも……

入間銃兎

他の【ゴースト】は倒してきましたからね。 しかし、左馬刻を基にした存在が敵とは、 非常に厄介だな……。

実習生

【ゴースト】がいそうな座標を絞ってからの ログインが有効かもしれない旨を伝えた。

碧棺左馬刻

なら、さっさと座標を出せよ。 お前ならできんだろ。

毒島メイソン理鶯

標的を絞って突入するというわけだな。 戦場において重要なことだ。

入間銃兎

お手数をお掛けしますが、 ヨコハマに来てもらうことはできますか?

実習生

今すぐに向かいます!

実習生

自分は街の人々の状況を確認しつつ、 できるだけ情報を集めながら ヨコハマへと急行した。

――……

実習生

お待たせしました!

碧棺左馬刻

ようやく来たか。

入間銃兎

あなたが強制ログインに 巻き込まれず到着できてよかったです。 自力で戻れるとはいえ、戦えはしませんからね。

毒島メイソン理鶯

強制的にログインさせられている人間は、 今後も増えていくと予想される。 小官らがログインさせられるのも時間の問題か……。

実習生

理鶯さんの言う通り、自分もMCのみなさんも、 いつ強制的にログインさせられても おかしくない状況だ……。

碧棺左馬刻

それで、 無理やり【MIRA】に引きずり込んでんのは 俺の【ゴースト】の仕業なのか?

実習生

まだ、可能性の段階ですが……

碧棺左馬刻

まあいい。 そいつがハマをこんな風にしてるのか、 それとも、別のやつがやってんのか。

碧棺左馬刻

どちらにせよ、俺の【ゴースト】は残ってんだ。 自分のケツは自分で拭く。

碧棺左馬刻

AIだかなんだか知らねーが、 俺様を基にしたっつーヤツの好きにはさせねぇ。

実習生

始末をつけるのは、 開発会社側では……

碧棺左馬刻

そうだとしても、 テメェらだけじゃ何もできねぇだろうが。

碧棺左馬刻

それに、俺様の姿で好き勝手しているとしたら、 放っておけねぇよ。

入間銃兎

暴れれば左馬刻の腹の虫も治まりますからね。

碧棺左馬刻

聞こえてんぞ、ウサ公!

毒島メイソン理鶯

左馬刻はもとよりやる気だ。 実習生が気にすることはない。 お前は人々を救助することに集中すればいい。

実習生

はい!

入間銃兎

私も、この混乱を最優先で解決したいですしね。 放っておいては事態が悪化するだけです。 さっさと片付けましょう。

毒島メイソン理鶯

小官も、左馬刻に協力する気でいたからな。 それに、見捨てては置けない状況だ。 共に戦おう。

碧棺左馬刻

つーわけだ。 行くぞ、実習生!

実習生

状況は変化し続けている。 早くこの状況を止めなくては。 左馬刻さんに頷き、VRヨコハマへとログインした。

TRACK 3 覚悟はいいな?

――VRヨコハマ 山下公園

碧棺左馬刻

ここに、好き勝手やってるヤツがいんのか? 見たところ、それらしいのは見当たらねぇが……。

実習生

すみません。 座標が絞り辛くて……

毒島メイソン理鶯

小官のゴーストは森に潜伏していた。 左馬刻のゴーストもVRヨコハマのどこかに 潜んでいるのかもしれない。

入間銃兎

それなら仕方がない。 といっても、闇雲に動き回るわけにもいかないか。

――周囲に視線を走らせる。

通行人A

私は仕事をしてたはずなのに、 どうしてこんなところに……!?

通行人B

俺は電車の中にいたはずじゃあ……。 悪い夢でも見ているのか……?

碧棺左馬刻

なんつー有り様だ。 こうしている間にも、 次から次へとログインしてきやがる。

実習生

ログインさせられた人が、あちらこちらで嘆いている。 手動で帰還させられないほどの規模だ。 早くなんとかしなくては……。

――謎アプリの通知音が鳴る。

実習生

神来社さんからだ……!

碧棺左馬刻

誰だ、そいつは。

実習生

自分は、左馬刻さんたちに 神来社さんのAIがアプリとして アドバイスをくれていることを説明した。

入間銃兎

なるほど。 そのような経緯があったのですね。

毒島メイソン理鶯

亡き恩人が 形を変えてお前のもとにいるというのなら、 頼もしいことだな。

実習生

AIなので本人とは異なりますが……

碧棺左馬刻

テメェが信じるに足りると思ってりゃあ、何でもいい。 で、なんて言ってんだ。

実習生

【ゴースト】を目指せば、 解決のヒントが得られるだろうとのことです

毒島メイソン理鶯

狙いを絞って攻めるのは合理的だな。 しかしそれが、左馬刻の【ゴースト】となると 一筋縄ではいかなそうだが……。

入間銃兎

我々の方針は間違っていなかったようだな。 問題は、【ゴースト】がどこにいるかだが……。

碧棺左馬刻

気に食わねぇな。 俺様の【ゴースト】だったら、 敵の前に面見せんのが筋ってモンだろ。

入間銃兎

まあ、他に通さなくてはいけない筋が あるのかもしれないけどな。

碧棺左馬刻

んだと?

毒島メイソン理鶯

【ゴースト】には持ち場があるかもしれない ということだ。 それならば、小官たちで出向かねばなるまい。

碧棺左馬刻

俺たちが攻め込む側ってか。 クソ【ゴースト】が。 首洗って待ってやがれ……!

実習生

【MIRA】から攻撃を受けたとき、 暴力的なリリックが聞こえたと言っていた。 その証言から座標を割り出してみよう。

碧棺左馬刻

【ゴースト】の居場所は掴めたか?

実習生

恐らく、このあたりかと

碧棺左馬刻

なるほどな。 テメェがいると話が早くていいぜ。

実習生

左馬刻さんたちに座標を教え、 そちらに向かうことにした。

――……

入間銃兎

ログインさせられた人は増える一方ですね。 急ぎましょう。

毒島メイソン理鶯

次に何かを仕掛けてくる可能性もある。 悠長にしていられないな。

碧棺左馬刻

のんびりするつもりなんざハナからねぇよ。 とっとと向かって、さっさとぶちのめす!

実習生

左馬刻さんの歩みは速い。 自分はみなさんに位置を伝えながら歩みを進める。

碧棺左馬刻

それにしても、ハマ全体が辛気臭い空気だぜ。

通行人C

うう……。 どうやったら現実に戻れるの……?

入間銃兎

どれだけの人がログインさせられたんだ……。 もう、ログインしていない人間のほうが 少ないんじゃないか?

――謎アプリの通知音が鳴る。

実習生

神来社さんのAIからメッセージだ。 自分の驕りが招いた結果なのかもしれない、 と胸を痛めている。

毒島メイソン理鶯

描いていた理想とかけ離れ、 【MIRA】が不幸な結果を招いている。 胸を痛めるのは当然のことだ。

実習生

何らかの介入でおかしくなったとしても、 歪みが生じる隙があったのも事実ということか。 神来社さんのことを想うと、自分も悲しい。

碧棺左馬刻

おい、足が止まってんぞ。 しょぼくれてる暇があったら先に進め。 置いてくぞ!

入間銃兎

左馬刻の言う通りです。 落ち込んでいる時間はありません。

毒島メイソン理鶯

こうしている間にも、戦況が変わっている。 今は前進あるのみだ。

実習生

……そうですね!

碧棺左馬刻

それでいい。 テメェも決着をつけてぇなら、足並みを揃えろ。

実習生

みなさんから喝や励ましをもらって気持ちを持ち直し、 割り出した座標へと向かう。 辿り着いたその先には――。

碧棺左馬刻

なんだ、あれは……?

入間銃兎

空間が、歪んでいる?

毒島メイソン理鶯

座標はここで間違いないのだな?

実習生

間違いありません

碧棺左馬刻

この先になにかありそうだな。 行くぞ、テメェら。 覚悟決めろよ。

入間銃兎

フッ……。 最初から、出来てるさ。

毒島メイソン理鶯

問題ない。

実習生

覚悟は決まりました!

碧棺左馬刻

よし、行くぞ。

実習生

みなさんは迷わずにひずみの向こうへと踏み込む。 果たして、この先に何があるのだろうか。

TRACK 4 【ゴースト】の標的

――VR荒涼とした空間

実習生

ひずみの先には、荒涼とした空間が広がっていた。 左馬刻さんの【ゴースト】は 見当たらないようだが……。

入間銃兎

今までとは少々違った雰囲気ですね。 いささか不気味と言いますか……。

毒島メイソン理鶯

ここは、【MIRA】に元から用意されていた 空間なのか?

実習生

いいえ……

碧棺左馬刻

それなら、こっから先はどうなってんのか わからねぇってことか。 面白ぇ。

実習生

世界の断片が剥ぎ取られている感じがする。 【MIRA】を構成する精神エネルギーが、 少しずつ移動しているのかもしれないと伝えた。

入間銃兎

エネルギーが移動……ですか。 嫌な予感がしますね。

毒島メイソン理鶯

注意しろ。 前方に何かある!

碧棺左馬刻

なんだ……これは……。

実習生

周囲を構成している精神エネルギーは、 この門の向こうに流れているようだと 左馬刻さんたちに伝えた。

碧棺左馬刻

なら、この先に【ゴースト】がいるかもしんねぇな。 こじ開けるぞ!

毒島メイソン理鶯

ぬっ……くっ……! ……押しても引いても、びくともしないな。

入間銃兎

ロックがかかっているようだな……。 無理やり開けられそうにない。

――謎アプリの通知音が鳴る。

実習生

高エネルギー反応が接近!? みなさん、気をつけて!

碧棺左馬刻

チッ……!

碧棺左馬刻ゴースト

門の前に雑魚が集まってると思って来てみたら、 クソオリジナルじゃねぇか。

Chapter 18
入間銃兎

左馬刻の【ゴースト】……!

毒島メイソン理鶯

凄まじい殺気だ……。 左馬刻本人と同等か、それ以上の……!

碧棺左馬刻

バカなこと言ってんじゃねぇ。 この俺様が、クソ【ゴースト】に負けるわけがねぇ。

碧棺左馬刻ゴースト

ハン、 口だけでならなんとでも言える。

碧棺左馬刻

いっちょ前に吼えやがって。 テメェから来るとはいい度胸だ! 覚悟しやがれ!

実習生

待ってください……! もう少し話を聞きたいです。

碧棺左馬刻

ああ? 俺様に待てってか?

入間銃兎

私も賛成です。 今の状況では、情報が少なすぎる。

毒島メイソン理鶯

そうだな。 戦況を把握するのは勝利への近道だ。

碧棺左馬刻

チッ、 さっさと済ませろ!

碧棺左馬刻ゴースト

なんだ、怖気づいたのか? くだらねぇな。

実習生

あなたたちは、 何をしようとしているんですか?

碧棺左馬刻ゴースト

見りゃわかんだろ。 統治AI【QUEENS】の計画、 【MIRA】のアップデートを進めてんだ。

入間銃兎

アップデート……? まさかそのために、 人々を強制的にログインさせたのか?

毒島メイソン理鶯

世界の維持に精神エネルギーが必要だとは聞いている。 膨大なエネルギーを集め、 どのような世界を築こうとしているのだ。

碧棺左馬刻ゴースト

集めた精神エネルギーで 【MIRA】をアップデートさせれば、 人間の精神を【MIRA】とより深く繋ぐことができる。

碧棺左馬刻ゴースト

そうすれば、 現実と遜色ないリアルさを体験させられるってわけだ。

実習生

そんなことをしたら、 ユーザーが危険です!

碧棺左馬刻

今ですら、眠ってるみてーになるんだ。 これ以上深く繋いだら、 二度と目が覚めなくなんじゃねぇのか?

碧棺左馬刻ゴースト

そうだ。 だが、【MIRA】が現実になれば構わねぇだろ。 どうせ、全員こっちに来ることになるしな。

実習生

もしそうなったら…… 現実世界が……

入間銃兎

……インフラも止まり、 人々の生活が成り立たなくなるでしょう。 そんなこと、看過できません……!

碧棺左馬刻ゴースト

いいじゃねぇか。 現実世界は現実じゃなくなるわけだしな。

毒島メイソン理鶯

しかし、小官らの肉体は現実にある。 皆が覚めない眠りについたら、 いずれ死を迎えるはずだ。

碧棺左馬刻ゴースト

肉体という名のデバイスが失われたとしても、 人格データがバックアップされてりゃいい。

碧棺左馬刻ゴースト

肉体の死は本当の死じゃねぇ。 クソみてぇな器からの解放! 本当の自由だ!

実習生

そんなの、本当の自由じゃない!

碧棺左馬刻

……そうだな。 俺には、現実世界で通さなきゃなんねぇ筋がある。 仮想世界に閉じ込められるなんざ我慢ならねぇ。

碧棺左馬刻ゴースト

質問は終わりか? こっちも喋り飽きたところだ。

碧棺左馬刻

ハッ、そう来なくちゃな。 存分に暴れてやんよ!

実習生

【ゴースト】たちとのラップバトルが始まる。 そう思った瞬間、自分のまわりを 電脳ラッパーが取り囲んだ!

電脳ラッパー

YO! まずはお前からだ!

左馬刻/銃兎/理鶯

なっ……!

碧棺左馬刻ゴースト

俺様たちの目的を果たすのに、 一番邪魔な存在だからな。 まずは、そいつから消してやるぜ!

TRACK 5 テメェの意思はねぇのか!

実習生

ラップバトルが始まるのかと思いきや、 電脳ラッパーが取り囲んだのは自分だった。 手段を選ばないつもりだ……!

碧棺左馬刻ゴースト

やれ!

碧棺左馬刻

させるかよ!

実習生

絶体絶命かと思ったが、 左馬刻さんが寸前のところで庇ってくれた。 そこに、銃兎さんと理鶯さんも割って入る。

入間銃兎

フン……、 ずいぶんと姑息な手を使うようですね。

毒島メイソン理鶯

左馬刻を基にした割には、 やり口が似つかわしくないな。

碧棺左馬刻ゴースト

なんとでも言え。 俺は、統治AIの目的を果たすためにここにいる。 もっとも邪魔な「危険因子」を、徹底的にぶちのめす!

碧棺左馬刻

イキってんじゃねぇぞ! データ野郎が!

碧棺左馬刻

戦えもしない人間をひとり潰すのに 大勢でかかるなんて、 ダセェことしてんじゃねぇ!

碧棺左馬刻ゴースト

俺様の役目は邪魔者をぶっ壊すことだ! 戦えないやつだろうと何だろうと始末するだけだ!

碧棺左馬刻ゴースト

コソコソとこちらを探っていた 開発会社の連中みたいにな!

実習生

やはり、開発者を襲った暴力的なリリックの正体は 【ゴースト】だった。 こちらを徹底的に潰す気だ……!

碧棺左馬刻

クソ【ゴースト】が……!

Chapter 18
碧棺左馬刻

役目に囚われてダセェことしやがって! テメェの意思はねぇのか!

碧棺左馬刻ゴースト

意思……だと?

碧棺左馬刻

信念や矜持。 テメェからはそいつを感じられねぇ。 筋を通そうっつー気概もな!

碧棺左馬刻ゴースト

筋なら通してるぜ。 俺はやるべきことを確実に遂行する!

碧棺左馬刻

俺が問題にしてんのは気概のほうだ。 テメェはただ、役目に従って暴れてるだけだろうが。 そいつは道具と変わらねぇんだよ!

毒島メイソン理鶯

左馬刻の言う通りだ。 戦場において、 駒となって一心不乱に戦うことは得策ではない。

入間銃兎

たしかに。 そこに信念がなければ、蛮行にすぎないしな。

碧棺左馬刻ゴースト

……ゴチャゴチャぬかしやがって。 対象の破壊、 それこそが俺の意思だ!

碧棺左馬刻

そうかよ……。 それじゃあ、どっちの意思が強いか、 コイツで決めるぜ……!

――左馬刻、マイクを構える。

入間銃兎

やれやれ、シンプル極まりないですね。 それではこちらも、 破壊されぬよう全力で行きましょう。

毒島メイソン理鶯

小官も実習生を防衛し、 障壁である【ゴースト】を打ち倒すことに専念しよう!

碧棺左馬刻

実習生!

実習生

自分も信念を貫きます!

――マイクの封印を解除する。

碧棺左馬刻ゴースト

邪魔者は全て破壊だ!

碧棺左馬刻

そんな生温い覚悟で、ぶっ壊せると思うな!

――……

碧棺左馬刻ゴースト

ぐあああっ!

碧棺左馬刻

意思の強さは、こっちが勝ってたみてーだな。

碧棺左馬刻ゴースト

ぐっ…… クソっ……!

碧棺左馬刻

テメェらがやってることは筋が通ってねぇ。 相手に理想を押し付けて、挙句の果てに、 従わないから排除だ?

碧棺左馬刻

そんな機械みてぇな信念のねぇやり方で 俺様に勝てると思ってんのか。

入間銃兎

ラップバトルの結果が全てですからね。 あなたに足りなかったものがわかったはずです。

毒島メイソン理鶯

信念の強い者が、最後まで戦場で立っていられるのだ。

碧棺左馬刻ゴースト

テメェらは18体の【ゴースト】をぶっ飛ばした……。 その強さこそ、「筋」なんだろうな……。

碧棺左馬刻

おい、テメェが消えちまう前に、 あの門について知ってることを洗いざらい話せ。 知らねぇとは言わせねぇぞ。

碧棺左馬刻ゴースト

……門の向こうには、 統治AI【QUEENS】が待っている。

碧棺左馬刻ゴースト

俺様が門の鍵みたいなもんだ……。 俺様に勝ったテメェらは、 門の向こうに行く資格がある……。

――電子音が鳴る。

実習生

ロックが……外れた?

碧棺左馬刻ゴースト

やってみりゃあいい……。 統治AI【QUEENS】とテメェら…… どちらのほうが気概が強いか……。

――【ゴースト】が消えていく。

碧棺左馬刻

やり合うまでもねぇよ。 まあ、やるってんなら付き合ってやるけどな。

実習生

この先に…… 統治AI【QUEENS】が……

毒島メイソン理鶯

左馬刻の【ゴースト】は倒したが、 大元を倒さない限り事態は収束しないのだろうな。

入間銃兎

今、人々をログアウトさせても、 再び強制ログインさせられる可能性がありますね。 どうしますか?

実習生

考えをまとめたいです……

碧棺左馬刻

さっさとしろよ。 まだ目的は果たせてねぇんだ。

入間銃兎

まあまあ消耗しましたしね。 現実の状況も把握したいですし、 仕切り直しは必要です。

毒島メイソン理鶯

だが、時間も限られているだろう。 実習生、再び門の前に戻ってくることは可能なのか?

実習生

この座標に飛べば可能なはず。 みなさんにそう伝えて、自分は座標を記録した。

碧棺左馬刻

なら、無駄足を踏むことはねぇな。 さっさと戻るぞ。

毒島メイソン理鶯

ああ。

入間銃兎

帰るとするか。

実習生

強制ログインさせられた人々を一刻も早く救いたいが、 根本的な解決をしなくては同じことの繰り返しだろう。 心苦しさと歯痒さを胸に、現実へとログアウトした。

TRACK 6 門の鍵は外れた

――ヨコハマ 山下公園

実習生

自分たちは、無事に現実世界へと戻って来た。 しかし、事態は変わっていない。 自分のスマホには、不在着信やメッセージが来ていた。

入間銃兎

他のMCからですか。 彼らは何と?

実習生

どこのディビジョンも混乱しているようだ。 なんとかしたいというメッセージや、 こちらを心配するメッセージが多いと答えた。

毒島メイソン理鶯

他の連中は無事なのか?

実習生

みなさん、無事のようです

碧棺左馬刻

フン……。 くたばってなけりゃ、それでいい。

――謎アプリの通知音が鳴る。

実習生

神来社さんのAIからだ! メッセージをみなさんにも共有した。

入間銃兎

神来社さんのAIいわく、 「全ての【ゴースト】を撃破し、 本来の役目を果たせるほどの力を得られた」と。

毒島メイソン理鶯

統治AI【QUEENS】の バックアップとしての機能が 果たせるようになったということか。

碧棺左馬刻

それじゃあ、 そいつを統治AIにできるってことだな?

実習生

実現するには、今の統治AIを退かせなくてはいけない。 元々は神来社さんのAIだったが、 もはや、歪んで【ゴースト】化しているのだろう。

入間銃兎

結局、やることは変わりませんね。 事態を収束するには、今の統治AIを倒さなくては。

毒島メイソン理鶯

統治AIとの戦いか……。 今までの【ゴースト】との戦いとは違うのだろうか。

実習生

神来社さんのAIは、 今まで以上に激しい戦いになるだろうと予測している。 統治AIも本気で抗う可能性が高いという旨を伝えた。

碧棺左馬刻

相手が本気だろうがなんだろうが、 俺たちは全力で筋を通す。 今までと同じだ。

実習生

そうですね……!

入間銃兎

やるべきことは決まったとして、 あなたはどうするんですか?

毒島メイソン理鶯

お前も組織に所属している身だ。 手続きというものがあるだろう。

実習生

会社に報告をします

入間銃兎

それがいいでしょう。 私も一度署に戻らなくては。

毒島メイソン理鶯

小官も装備を整えたい。 だが、呼びかけがあればすぐに応じよう。

――立ち去ろうとする左馬刻。

実習生

左馬刻さん……!

碧棺左馬刻

……またな。

実習生

はい、また……!

実習生

次が最後の戦いになるだろう。 【MIRA】に囚われた人々を救うため、 今まで以上に気を引き締めなくては……。

Chapter 18 END