

――中王区管制室
【MIRA】のエキシビション・ラップバトルの最中に 統治AIの暴走による爆発に巻き込まれた乙統女と 無花果は、快復して管制室の立て直しを図っていた。
制御不能となった【MIRA】への対策を 講じていたところに、開発会社から報告が上がる。
今の統治AIには神来社の【ゴースト】がいること。
そして本来、【QUEENS】のバックアップであった 神来社AIが機能を取り戻し、正常な統治AIとして 【MIRA】を運用していくことが可能だと伝えられた。
なるほど……。 暴走した統治AIを打ち倒し、それに代わる存在として 神来社のAIを据えるというのですね。
はい。 そうすれば、【MIRA】のログアウト機能も復旧し、 従来通りの運用が可能との報告です。
そこで、【MIRA】で起きたトラブルを 解決してきたインターン生が現地に向かうようです。
加えて、下郎どもの協力も仰ぐことでしょう。 統治AIには対抗できるかと思いますが……。
しかし、我々ですら制することが できなかった統治AI……。 彼らだけでは手に余るかもしれません。
それでは、我々が助け舟を出すのはいかがでしょう。 下郎どもに協力する形になってしまいますが、 中王区の力が加われば、迅速に解決できるはずです。
……そうですね。 それが最善の策でしょう。
我々中王区も、 開発会社を全力でバックアップするのです。 必ずや、作戦を成功させましょう。
はっ! 開発会社にも連携の旨を伝えます!
――……
――実習生の部屋
今までの出来事を全て会社に報告した。 あとは、【MIRA】にログインして、 統治AIと対決するだけだ。
統治AIに立ち向かうには、 これまで共に戦ってきた MCのみなさんの力が必要だが……。
――扉をノックする音
どなたですか?
私です。
ご無沙汰してます……!
ずいぶんと頼もしくなりましたね。 見違えてしまいました。
さて、今日は直接お伝えしたいことがあって、 ここに来ました。
伝えたいこと……?
中王区は統治AI【QUEENS】に向かう 皆さんを全力でバックアップすることを決定しました。 必要な人員や設備はすべて提供します。
統治AIとの戦いに集中してもらえるよう、 現実世界でのサポートは任せてください。 それが、我々の果たすべき責任ですから。
責任とは?
統治AI【QUEENS】が暴走したきっかけは、 恐らく、我々が手を加えようとしたせいです。
そうだったんですね……
……ええ。 調査の一環でやむを得ず行ったことですが、 このような事態を招いてしまい申し訳なく思っています。
わかりました……
……私たちを責めないんですね。
今優先すべきことは、 【MIRA】の正常化なので
わかりました。 みんなを救いたい気持ちは同じです。 共に頑張りましょう。
はい!
――合歓が立ち去る
統治AIとの決戦で 中王区が協力してくれるのは頼もしい。 MCのみなさんに連絡して決戦に備えよう。
――……
――イケブクロ 西口公園
MCのみなさんに協力を仰ぎたい。 会って話したいことを伝えたが……。
よぉ、待ってたぜ。 連絡くれてありがとな。
おせーぞ。 チンタラ来やがって。
やっほ~☆ また会えたね~。
相変わらず元気そうでなによりです。 さて、話を聞かせてもらえますか?
はるばるオオサカから来たんや。 おもろい話、期待しとるで!
いいツラ構えじゃねーか! こりゃあ、期待できそうだな!
みなさん……!
集まってくれたMCのみなさんが、あまりにも頼もしい。 自分はお礼を告げ、現状の説明を始めた。
自分は、集まってくれたMCのみなさんに、 事態を収める方法や中王区がバックアップしてくれる ことを説明した。
現統治AIを排除すれば、 混乱が収まるはずです
本来の役目を果たせなくなったものと、 役目を果たせるものを交代させる。 実にシンプルな方法ですね。
そのために、今の統治AIをぶっ倒すってわけか。 すげーわかりやすいぜ!
かつての王は魔王となり、世界に混乱を齎した。 その魔王を打ち倒し、新たな王を据える、と。 単純明快でいい筋書きですね。
【MIRA】は本来、 人々の幸福のために生まれました
生き辛い人たちに手を差し伸べ、 みんなが幸せになるように という願いが込められていたようだね。
今の【MIRA】は、それどころやない。 【MIRA】の暴走で 困っとる人間がぎょーさんおる。
みなさんのため、そして、 【MIRA】を創った神来社さんのためにも、 なんとかしたいっすよね……。
みなさんのお陰で、 解決の兆しが見えました
ふん、感謝しろよ。 でも、僕たちだけの力じゃないけどな。
そうだな。 実習生は自分なりに戦ってきた。 立派な戦士だ。
で、どうすんだ? 集めたメンツからして ここでオールインって 雰囲気に見えるけどよ。
現統治AIと決着を つけなくてはいけません
ま、そーなるだろうな。 読み通り、面白くなってきたな。
白黒はっきりさせねぇとな。 やることはひとつだ。
ついに最終決戦か…… 俺も協力……いや、 俺なんかが行ったら、足を引っ張ってしまうかも……。
状況はわかった。 改めて説明してくれてありがとな。
それで、あんた自身はどうしたいんだ?
【MIRA】を元に戻したいです
現統治AI、すなわち、神来社【ゴースト】もまた 大切な恩師の断片から生まれたもの。 彼と向き合い、決着をつけたいとも伝えた。
そうか。 そいつを聞けてよかったぜ。
でも、自分は直接は戦えません…… 力を貸してもらえますか?
いいぜ! ラップバトルは俺たちに任せとけ!
俺らはぶち壊す方担当だ! 考えんの担当はお前だからな!
壊すことしか考えてないのは二郎だけじゃないか? けど、考えることに専念してくれるやつがいるのは 頼もしいね。
そうと決まれば、とっとと行くぞ。 ここでくっちゃべっててもしょうがねぇ。
悠長にしていられませんしね。 迅速に終わらせましょうか。
ああ。 あとは大将を討つのみ。 全力で行こう。
みんなが眠っちゃう世界なんてツマンナイからね~。 ボクも手伝っちゃうぞ☆
小生も、物語の続きが気になりますしね。 ハッピーエンドになるのか、 それとも、別の結末を迎えるのか。
ハッピーエンドに決まってんだろ。 俺はそっちにベットするぜ!
みなさんを救うためならば、協力を惜しみません。 ともに事態を打開しましょう。
僕たちがついているよ。 大船に乗ったつもりでいたまえ。 そうだろう、独歩くん!
うう……、 俺が泥船にしないようにしないと……。
【MIRA】の本当の姿が見られるなら、 俺もひと肌脱いだる! 現実も仮想も、笑顔が溢れる場所にするんや!
そうやな。 最初に思い描かれてとった姿に戻せれば、 色んな人間の居場所ができる。
メタバースの居場所を得た連中が、 どうなってくのかも興味があるしな。 おいちゃんもひと肌脱ぐとすっか。
みんなまとめて、拙僧が導いてやる! 遅れんじゃねーぞ!
は、はいっす! みなさんを助けて、 元気になってもらうために頑張るっす!
仕方ねぇ。 お前たちだけじゃ不安だ。 まとめて面倒を見てやるぜ。
ありがとうございます! 頼もしいです!
みなさんとともに【MIRA】へと向かう。 全ての決着をつけるために。
――VR荒涼とした空間
あの扉は、統治AIに繋がっている。 神来社さんのAIを統治AIに据えるべく、 現統治AIを退けなくては……。
あとは最後の扉を開くだけか。 ようやくここまで来た、って感じがするな!
そうですね。 色々ありましたが、 これで最後だと思うと感慨深いです。
統治AIってやつを倒したら、 全部解決して めでたしめでたしってことだな!
そんなに単純なことじゃない。 こっち側の神来社のAIと現統治AIを交代させて、 全員のログアウトを可能にしてもらうんだ。
でも結局、 今の統治AIを倒さなきゃならねーんだろ? 俺らがやることはひとつだっての。
さっさとぶちかましに行きたいが……、 その前にやらなきゃならねぇことがありそうだ。
――出現した何かに囲まれるBuster Bros!!!の3人
なんだぁ!? 変なのが湧いて来たぞ!?
囲まれた……!? 今まで見てきた雑魚とは様子が違う……!
統治AI【QUEENS】が創り出したもののようだ。 急きょ、門番として生み出されたのではないか と伝えた。
へぇ、 即席の兵士で僕たちに対抗しようだなんて、 舐められたものだね。
よくわかんねーけど、 ぶっ倒せばいいってことだな!
いっちょ、かますか! 頼むぜ、実習生!
お願いします!
――マイクの封印を解除する。
どんな壁だろうと、ぶち壊していくぜ!
よっしゃあ! 勝ったぜ! 口ほどにもねーな!
調子に乗るな、バカ。 あいつらはただの雑魚だ。 それに、他にもいるみたいだ。
他の奴らも囲まれたか……! おい、そっちは大丈夫か!
ああ? 誰に向かって聞いてんだ。
この先にあるのは、 【MIRA】の頭脳のようなものですからね。 すんなり入れるとは思っていませんよ。
小官の前に立ちふさがるのであれば、 殲滅するのみだ。
封印を解きます!
――マイクの封印を解除する。
ブッとべや!!
殲滅完了。 前哨戦としては悪くなかったな。
とは言え、少々消耗してしまいましたね。 こちらの気力を削るのが目的なのかもしれません。
別に構わねぇ。 売られた喧嘩は買う。 それだけだ。
やれやれ。 血の気が多い奴だ。 ま、確かに買わないという選択肢はないけどな。
お互いにぶつかり合うしかないのだろうな。 さて、敵はあとどれくらいだろうか。
ふむ。 ご丁寧なことに、 他のチームの前にも立ちふさがっていますね。
左馬刻、援護をするか?
ああ? いらねぇよ。 そこまで軟弱な奴らじゃねぇ。
ふっ、それもそうだな。
それでは、 私たちは一足早く扉の前まで向かいましょうか。
おい。 そんくらい、テメェの敵じゃねぇだろ?
もっちろ~ん☆ ボクたちにかかれば、ちょちょいのちょいだよ♪ ね~、幻太郎、帝統!
さて、どうでしょう。 敵にすっかり囲まれてしまって、 麿は怖いでおじゃるよ、帝統~。
だーっ! 嘘ついてる場合じゃねーだろ!
おや、バレましたか。
当たりめーだろ! こんな時まで嘘吐いてんじゃねーよ!
最終決戦前に和ませようとしただけですよ。 肩の力が入っていたら、調子も出ないでしょう?
リラックスできた~? それじゃ、邪魔者を追い払おうか☆ 頼んだよ、実習生♪
了解です!
――マイクの封印を解除する。
アハハッ♪ ボクたちに勝てるカナ~?
よし! 立ちふさがってたやつらは倒したな!
口ほどにもありませんね。 所詮は、急ごしらえの傀儡でしたか。
ヨユーだったね♪ 準備運動にもならなかったよ~。
だな! 朝飯前だぜ!
それでしたら、まだまだおかわりがありますよ。 小生はお腹いっぱいですので、存分にどうぞ。
うげ……。 まだたくさんいんじゃねーか……。
うーん。 寂雷のほうはどう? 老体で厳しいだろうし、手伝ってあげてもいいケド~?
飴村くん。 お気遣い無用ですよ。 君こそ、油断しすぎないように。
ひぃ! 俺たちも完全に囲まれてます……! これ、負けたらどうなっちゃうんだ……?
電脳ラッパーにやられた人たちみたいに、 精神的な打撃を受けて、 昏睡状態になってしまうかもしれないね……。
せっかくここまで来たのに、 負けるわけにはいかない……! けど、こんな数を相手に勝てるのか……?
大丈夫。 僕たちで力を合わせれば、絶対に勝てる。
一二三くんの言う通りです。 それに、 私たちには未帰還者の命運もかかっています。
こんなところでネガティブになってたら いけないってことですね……。 俺は……できる……絶対に!
その調子さ!
封印解除します!
実習生さん、 有り難うございます! では、行きますよ!
ふぅ……。 なんとかなった……。
道が拓けたね! このまま突き進もう!
はっ、そうだ……! これで終わりじゃないんだ。 最後の仕事が残ってる……!
本丸は扉の向こうです。 早く向かいましょう。
はい! 一刻も早く、みんなを取り戻しましょう!
我々のほうは片付きましたが、 敵はまだ残っているようですね。 そちらは、大丈夫でしょうか?
俺らの心配をしてくれとるん?おおきに! けど、気遣い無用やで!
こんな雑魚くらい処理できんと、 統治AIは倒せんわ。
できるだけ気力を温存したかったんだがな。 まあ、準備運動がてらやるとしますか。
温存したいのは同じや。 扉の向こうに統治AIが待ち構えとるからなぁ……。
だが、出し惜しみで俺たちが倒されちまったら、 元も子もねぇだろ?
――マイクの封印を解除する。
準備ができました!
助かるで、実習生! ほな、行くで!
ざっとこんなもんや! 統治AIもこの程度なら、 短キカンでみんなキカンできるな!
楽観的なダジャレやな。 けど、気張りすぎてもあかんか。
それもそうだ。 興味深い事件だっただけに、 収束しちまうのはちっとばかし惜しいが。
こらこら、おっさん。 そないなこと言うて、手ぇ抜くなよ。
おおっと、俺がそんなことしそうに見えるか?
まあ、胡散臭いしなぁ。 けど……、やる時はやるんも知っとる。
せやな! はよ行くで! みんなの笑顔を取り戻すんや!
ああ! このまま、統治AIをどつきにいくで!
そうだな。 おいちゃんも、もうひと肌脱ぐか。
よっしゃ! 気合い充分やな! 空却、そっちはどうや!
こっちは問題ねーよ! どんなに敵が湧いてこようが、 まとめて説法を聞かせてやるぜ!
く、空却さ~ん! 目の前まで迫ってきてるっすよぉ~。
落ち着け、十四。 数ばかりで、たいしたやつらじゃないはずだ。
うう……、 そうっすね……! 自分も気合いを入れるっす!
よし。 こっちの準備はいいぞ!
――マイクの封印を解除する。
これで、いけます!
おうよ! 耳の穴かっぽじって、よく聞きやがれ!
ハッ! 軟弱なやつらだったぜ!
これで前に進めるっすね!
雑魚は全部片付いたみたいだな。 実習生、 そっちは大丈夫か?
問題ありません!
余裕がありそうっすね。 さすがっす!
無理してねぇならいい。 こっからが本番だからな。
いいじゃねーか。 修行を積んできたやつの面構えだ。
こんなに封印を解いてピンピンしてるなんて、 最初の頃が嘘みたいだな。
そうっすね。 初めて会った時のことが 遥か昔のことみたいっす……。
思い出に浸るのは全部終わってからだ! 今は統治AIに引導を渡さねぇとな! さあ、扉の先に行くぜ!
――扉を抜けた一同
ここに統治AI【QUEENS】がいるのか……!
それにしちゃあ、姿が見えねーな。
うーん、寝てるのかな? おーい! 遊びにきたよ~☆
MCたちを引き連れて、 ここまで来たとは。 やはりお前は「危険因子」だったようだな。
これは…… 神来社さんの声……!
この声の主があなたの恩師…… いや、あなたの恩師の【ゴースト】なのですね。
この私を【ゴースト】扱いするとは。 私は全てを平等に導く存在。 私が創る楽園は、生と死すら超越する。
生死を超越するったあ、神仏気取りか! 思い上がったテメェにも、 説法をくれてやるしかねーようだな!
空間全体に声が響いている。 この場所は統治AIの内部なのかもしれない と伝えた。
逆に、都合がええやん。 腹の底から笑わせればええんやろ? ほな、行くとしよか。
ふっ、無駄なことを……。
封印を解除します!
行くぜ!
攻撃が効いていない……!?
おい、どーいうことだ!? 俺らのラップが通じねぇぞ!?
たしかに、手応えを感じません。 これまでの相手とは明らかに違う……!
か、解析します……!
【MIRA】をアップデートするために、 大量に取り込んだ人々の精神エネルギーを、 自らに集中させていることが判明したと伝えた。
ふむ……。 大量の精神エネルギーを利用しているからこそ、 この強さというわけですね。
【MIRA】を守り、アップデートを果たすため、 精神エネルギーで自らを強化しているようだ。 今のままでは攻撃を受け付けないという話をした。
っ……! 統治AIも後がないし、 自分を守るのは当たり前のことやけど……。
ここまできて手も足も出ないなんて……。 なんとかならないっすか!?
他の方法を探ってみます……!
頼んだよ。 道を切り開けるのは、君しかいない……!
そうはさせない。 お前たちの存在はここで消去させてもらう。
――敵が出現する
さきほどの兵士たち……!? 新たに生み出せるということか……。 有栖川、そちらは任せるぞ!
理鶯さん、了解っす! 実習生は下がってな!
手分けするぞ、実習生! 僕ができる分析は引き受ける!
すみません、助かります!
さぁて、どうやって時間を稼ぐかね。 面白くなってきたじゃねぇか。
デジタルエネミーはいくらでも創り出せる。 精神力に限界があるお前たちに勝ち目はない。
俺たちと違って、AIは疲れることはない……。 もうだめだ……。 俺が力尽きる未来しか見えない……。
勝ち目がないとは言い切れないぜ。 人間ってのは、諦めが悪くてタフなもんだしな!
とは言え、敵の数が多すぎる。 一斉に攻撃されたらひとたまりもない。
――謎アプリの通知音が鳴る
謎アプリ……いや、神来社さんのAIからだ。 「今こそ、彼らの力を借りるとき」 ……彼らとは、まさか!
これは、妨害プログラム……!? まさか、もうひとりの私が干渉しているのか……! 邪魔をさせるか!
デジタルエネミーが一斉にこちらへ向かってくる。 その時、自分たちを囲むように18人の人影が現れた!
お前たちは……! 俺たちの【ゴースト】!?
久しぶりだな。 こんな形で再会するとは思わなかったぜ。
マジか! あの時、消えちまったのかと思ったぜ!
なんかよくわかんねーけど、 消えてなかったみたいだ!
神来社AIと僕たちは、元がひとつだから、 消えたんじゃなくて元に戻っただけだったんだ。 この姿と人格は、再生成されたものだけどね。
僕たちのことをちゃんと覚えているのなら、 再生成されても、お前たちはお前たちだ。
まさか、またテメェと顔を合わせることになるとはな。
安心しろ。 テメェの連れには手を出さねぇよ。
それでは、共闘ということになるのでしょうかね?
統治AIが手段を択ばないのなら、 こちらも手段を択ばないということです。
無限に戦える兵士には、 同じく無限に戦える兵士をぶつけるということか。
そのとおり。 我々も疲労することはない。 互角に渡り合えるだろう。
でもでも~、 統治AIは集めた精神エネルギーを 使ってるんじゃないカナ~?
そうだよ。だけど、疲労はしないけど 力が無限に使えるわけじゃないんだ。 エネルギーが先に尽きたほうが負け。
それでは、統治AIとの根競べになりそうですね。 大勢の人間の精神エネルギーを抱えたAIに、 人間とAIが手を取り合って抗うという……。
いい物語になりそうじゃないですか。 嘘偽りのない、真実の物語にしましょう。
よっしゃ! イカサマも八百長もねぇ! 真剣勝負だ!
一か八かでもない。 こちらの勝利は見えている!
なるほど。 昨日の敵は今日の友ということですか。
お前たちは、 本来あるべき【MIRA】に戻そうとしている。 だからこそ、手を貸すのだ。
本来目指すべきだった【MIRA】……。 神来社さんの祈りのことだね。
そう、愛に溢れた場所さ。 現実に身体があり、心が繋がっていてこそ、 新しい愛が生まれるのだと思うよ。
時には逃げ込む場所になり、 時には成長する場所になる。 誰もがそれを、享受できる場所……。
そうだ。 人間は、より良い未来を目指しているんだろ? 【MIRA】はそのきっかけのひとつだ。
だが、現実は甘くない。 弱者が黙殺され、強者に踏みにじられながら 不平等な未来が紡がれつつある。
それならば、【MIRA】という楽園に 全てを収めるべきなのだ。 全てをデータ化すれば、永遠に平等が約束される。
その楽園っちゅーのは、 AIが都合のいい未来を創り出すんやろ? そんなの、おもろないと思うで。
ハプニングもまた、おもろい人生のスパイスやな。 どうしょうもないハプニングはいらんけど。
人は間違えることもあるし、不平等を生み出すこともある。 せやけど、過ちを認めて行動を改めるからこそ、 思いやりっちゅーもんが生まれることもあるんや。
【MIRA】に込められた思いもまた、 そういうモンの積み重ねっちゅーわけやな。 そんなら、成長の余地を奪ったらあかん。
閉じられた環境っつーのは、停滞を招きやすいしな。 いずれ行き詰まるのが見えてるぜ。
箱庭に閉じ込めっ放しはよくねぇってことか。 成長が未来を創るのなら、 何事もほどほどにってな。
盆栽大木にならず、ってな! 狭い庭は、俺たちには合わねぇんだよ!
苦境を乗り越えることで、 より大きな救いの道が見出せるかもしれねぇ。 それならば、不平等に抗う価値があるってもんだぜ。
今こそ闇夜を祓い、曙を見せようぞ! (訳 今こそ統治AIを倒して、 みなさんを救うっす!)
「危険因子」……いや、曙の使者よ! 宴の準備はできているか!?
活路が見えました! もうすぐです!
させるか……!
雑魚どもは俺らに任せろ! オリジナルたちは、統治AIを頼む!
ああ、任せとけ! エンジンふかすぞ!
解析できました!
俺たちが持てる全てをぶつける!
いい加減、ぶっ壊れろや!
アハハ♪ ラストステージだし、盛り上げちゃうよ☆
人々の明るい未来のために、 あなたを倒します!
みんなが笑って過ごせる未来のために、 ステージから降りてもらうで!
冥土の土産をくれてやる! 歯ァ食いしばれや!
来るがいい! 我が楽園は、誰にも壊させやしない!
――……
なにが起こったというのだ……。 マイクの力は届かないはずでは……。
自分が言葉の力をプログラム言語に変換し、 直接叩き込んだのだと説明した。
そんな……ことを……。
成長したね……、 実習生……。
私の歪んだ願いを正してくれて、ありがとう……。 平等は押し付けるものではなく、 みんなで創り上げるものだから……。
神来社さん……!
それは、在りし日のこと――。
悩みごとかい? 遠慮せずに言ってごらん。
いつもすみません……
いいんだよ。 悩むのは当たり前だ。 人生はそういうものだから。
現実の自分は周囲と上手く馴染めず、 いつも躓いてばかりだ。 人生が平坦な道ならいいのにと伝えた。
全てが均されていたら、 躓くことや傷つくこともないのかもしれない。 でも、優しさや思いやりも生まれないと思うんだ。
躓いたり傷ついたりした人こそが得られるものもある。 辛い経験かもしれないけれど、経験した分だけ、 多くの人に手を差し伸べられるようになる。
君は、諦めずに立ち上がる強さを持っているからね。 その強さは、きっと誰かの助けになる。
君はいずれ、 大きなことを成し遂げられるかもしれない。 私は、そう思っているよ。
昔、神来社さんが自分に話してくれたことだ。 今ならばその意味が、わかる気がする……。
――……
――中王区内【MIRA】の管制室
【MIRA】が こちらの操作を受け付けるようになりました。 これで、未帰還者もログアウトできます。
統治AI【QUEENS】の交代に、 成功したのですね……。
すぐに、全ての未帰還者を ログアウトさせてください。 全員を現実へと戻すのです。
はっ!
よかった……。 みんなが、無事に帰れて……。
――イケブクロ 西口公園
気づいた時には、 あの場にいた全員が無事に帰還できていた。 中王区が戻してくれたのだろう。
これにて一件落着ってか。 まだ暴れ足んねー気もするけどな!
散々暴れただろうが。 いや、生身の身体を動かしてねぇから 体力が余ってんのか……。
なんにせよ、 みなさんを助けられて良かったっす!
未帰還者は、全員ログアウトしたようだ。
神来社さんのAIが統治AIになり、 【ゴースト】たちもその中に戻ったのだろう ということをみなさんに伝えた。
そいつぁ上出来だ。 後始末が大変かもしれねぇが、 まあ、何とかなるだろ。
【MIRA】が正常に動くようになったんなら、 エンターテイナーも必要やろ。 いつでも俺に声かけてや!
切り替えが早すぎるわ。 ま、【MIRA】の運用が正式に再開したら 遊びに行ってもええな。
私も病院に戻らなくては。 長い間あちらにいた人たちには、 リハビリが必要でしょうしね。
ずっと連絡がなかった子猫ちゃんたちから たくさんのメッセージが来ているよ。 みんな、戻ってこられてよかった……。
ひぃ! 怖い取引先の担当者から連絡が来てる……! も、もう少し眠っていて欲しかったかもしれない……。
ボクもオネーさんの様子を見に行こうかな~☆ 【MIRA】から帰ってきて大変だろうし。
未帰還者が大量に目覚めてるってことは、 久々に賭け仲間も集まってるかもしんねーな。 俺もギャンブルに行くぜ!
やれやれ、元気な人たちですね。 私も戻ってきた作家仲間と飲み会でも…… って、もちろん嘘ですけどね。
皆、夢から覚めて日常に戻っていくのだな。 小官もまた、野営地に戻るとしよう。
私も署に戻らなくては。 後処理が山積みになっているでしょうからね。
帰るか、俺たちのハマに。 ……じゃあな。
みなさん、 本当にお世話になりました
どうってことないさ。 お前もよくやったし、 胸を張っていいんじゃないか?
俺たちはダチなんだ。 困ったことがあったら、また呼んでくれよな!
そうだな。 俺たちは繋がってる。 オンラインでも、オフラインでもな。
はい!
困難に行き当たったとしても、 みなさんの力があれば乗り越えていける。 ともに未来を切り開けたことを誇りに思った。
